研究概要 |
年度ごとに主な成果を列挙する。全ての成果については,研究発表を参照されたい。 初年度:(1)単結晶La_<2-x>Sr_xCuO_4(LSCO)においてホール濃度の減少に伴いx_c=0.05で高圧下高温正方晶相の超伝導が一次相転移的に消失することを初めて発見。(2)トンネル分光からLSCO(x=0.02)は超伝導性を持たないにもかかわらず明確なエネルギーギャップを持つことを発見。(3)最適組成LSCOでの中性子散乱を用いた局所構造の研究,単結晶La_<1.48>Nd_<0.4>Sr_<0.12>CuO_4については,Cu K端X線吸収実験により電荷ストライプ秩序の応答関数として局所格子揺らぎの証拠を見出。(4)電子ドープNCCOの単結晶育成にも着手し,パルスエコー法超音波実験が可能な程度の単結晶育成に成功。横波弾性率を測定した結果,Ndの結晶場状態を決定することに成功。 次年度:(1)LSCOにおける圧力印可により高温正方晶相を安定化させたときのCuO_2面内抵抗ρ_<ab>と超伝導との関連性を詳細に研究。CuO_2面内の2次元金属伝導が銅酸化物の超伝導出現に基本的に重要であることが結論された。以上の結果により本科研費研究課題の主目的をほぼ達成。以降,新たな展開。(2)Ca_2RuO_4における圧力誘起反強磁性モット絶縁体-遍歴強磁性金属転移を発見。(3)Sr_2RuO_4における弾性率の温度依存性測定から直接的な時間反転非対称2次元超伝導秩序変数存在の実験的証拠検出。 最終年度:(1)極小外部交流磁場による磁化率測定から超伝導発現寸前の常伝導状態に位相がインコヒーレントなクーパー対が存在する可能性を示唆。(2)硫化スピネルCuRh_2S_4において圧力誘起による超伝導体-絶縁体転移を発見。3次元バルク超伝導体で世界初の成果。(3)UCu_2Snにおいては強的4極子秩序の実験的証拠を検出。(4)平行して,Ce三元系の強相関電子状態,Ti酸化物のd軌道秩序に関する成果を得た。
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