カイラル対称性の破れを伴う相転移の検証実験

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13440115
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 網代 芳民 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (00025438)
• 研究分担者: 川村 光 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30153018) ; 浅野 貴行 九州大学, 大学院・理学研究院, 助手 (00301333)
• キーワード: カイラル対称 / 相転移 / スピン対称性 / フラストレーション / カイラルグラス / Josephson結合 / 三角格子 / 普遍群

研究概要

カイラル相転移を多彩な物質系において実験的に検証するために、フラストレーションに由来してカイラル対称性を有する磁性体ならびに超伝導体を対象にして以下の計画を実施した。今年度の設備備品として超伝導磁石を購入し磁気共鳴実験環境を整備し、現有設備と国内外の共同利用施設を最大限に活用して実験的研究を実施中である。また、理論的観点から得られた結果についてその起源を注意深く詳細に考察中である。
<セラミック高温超伝導体におけるカイラル秩序相の微視的直接検証>
超伝導微結晶粒の集まりであるセラミック高温超伝導体では、d波対称性を反映してフラストレートした粒間Josephson結合を有するために、カイラル対称性自体が左右回転方向のJosephson超伝導電流環に対応するカイラル秩序が生じる事が期待される。粒径分布が比較的均一で化学量論比が定まっているために結晶学的に均質な試料が得られる定比化合物YBa2Cu4O8を用いて、カイラル秩序に伴って発生する超電流環による微弱磁場をミューエスアール法で直接検出する予備実験を実施し大変興味深い結果が得られている。
<フラストレートした磁性体におけるカイラル秩序相の検証>
カイラル秩序が関与する系としては、二次元三角格子系における自発磁化の発現を伴わないカイラル秩序相、積層三角格子系におけるスピン対称性とカイラル対称性の同時破れを伴う新しい相転移普遍群、連続的スピン対称性を持つスピングラス系におけるカイラルグラス秩序相、次近接相互作用のあるS=1、XY型一次元磁性体におけるカイラル秩序相などがある。典型的なモデル物質群について磁気共鳴、中性子回折、比熱、磁化率、強磁場磁化測定などを駆使した実験を実施した。今後、極端条件下での実験を行う計画である。

研究成果

• [文献書誌] Y.Ajiro et al.: "Magnetism of 1D Quantum Ferrimagnets, A3Cu3(PO4)4 with A=Ca, Sr"J. Phys. Soc. Jpn.. 70. 186-188 (2001)
• [文献書誌] Y.Koike et al.: "Neutron Scattering Study of the Field Induced Antiferromagnets Order and Magnetic Excitation in Linear Chain Haldane Compound"J. Phys. Soc. Jpn.. 70. 189-191 (2001)
• [文献書誌] T.Sakon et al.: "Electron Spin Resonance Study of Cu Benzoate Using a 3He-4He Dilution Regrigerator"J. Phys. Soc. Jpn.. 70. 2259-2262 (2001)
• [文献書誌] M.Fukita et al.: "Trinuclear Cu(II)M(II)Cu(II) complexes of an oxamide/dioxime ligand and extension to a bimetallic magnetic compound"J. Chem. Soc., Dalton Trans. 64-70 (2001)
• [文献書誌] M.Mekata et al.: "Quantum spin chain systems with singlet ground state, ACu2(PO4)2 (A=Sr and Ba)"J. Magn. Magn. Mater. 226-230. 410-411 (2001)
• [文献書誌] T.Asano et al.: "μSR Study of Cu Benzoate at Very Low Temperature --Existence or Nonexis tence of Long Range Order in Coupled Chains--"J. Phys. Soc. Jpn. 71. 594-598 (2002)