研究概要 |
(CH_3)2_CHNH_3CuCl_3と(CH_3)2_CHNH_3CuBr_3に対する帯磁率、磁化過程、磁場中比熱などの測定により、前者がHaldane系,後者がdimer系であることを解明してきた。無磁場あるいはエネルギーギャップに比べてはるかに弱い磁場中では、((CH_3)2_CHNH_3CuCl_3のスピン状態は温度低下と共にS=1/2の性質からS=1のそれへと移り変わっていき、OK近くではHaldaneギャップを挟んだS=1のtripletからsinglet(S=0)の非磁性状態へ落ちていく。一方IPACuBr_3ではOKで反強磁性結合したスピン対がダイマー(S=0)として振舞うが、ある程度の温度領域でS=1の励起状態を占める。IPACuCl_3では強磁性結合したスピン対が低温領域でS=1として振舞う事実は、triplet内でのΔS_z=±1の遷移、即ちS_z=1【double half arrows】S_z=0及びS_z=0【double half arrows】S_z=-1のつの遷移が2本のESR吸収線として現れることで確認された。(CH_3)2_CHNH_3CuCl_3はNi^<2+>からなる本来S=1のHaldane系に不可避な一軸性異方性DS^2_Zを持たない。従ってS=1を持つ1dHAF系に対する理論との対応にはむしろ好都合である。一方(CH_3)2_CHNH_3CuBr_3では交替するJ_1とJ_2のうち強い方で反強磁性的に結合したスピン対がダイマーとして振舞うために、低温においてsinglet-triplet間のエネルギーギャップを生じる。ボンドランダム系(CH_3)2_CHNH_3Cu(Cl_xBr_<1-x>)_3の単結晶をx=0〜1の全領域で育成した。xの全領域の単結晶に対して帯磁率や比熱の測定を行い、エネルギーギャップのx依存性を得た。即ちxの中間領域0.87>x>0.44においてgapless相が確認された。このgapless相では鎖間の交換相互作用によってT_N=15Kを持つ相転移が現れた。Jのrandomness導入によってなぜgapless相が出現するのか、という命題での理論的追求に具体的な足がかりを与え、理論家からも注目された。
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