研究概要 |
(1)位置敏感型イオン検出チャンバーの設置と性能評価 新たに製作した位置敏感型イオン検出チャンバーを設置し,テスト用位置敏感型イオン検出器を取り付けて,チャンバー内真空度,レーザー強度,イオン引きだし電場,およびレーザー偏光方向などの最適化を行った.ターボ分子ポンプを用いてチャンバー内真空度を10^<-10>Torr以下に保つことによって生成した強光子場(10^<14>-10^<15>W/cm^2)におけるクーロン爆発イベントを,残留気体からの擬コインシデンス信号を最小限にとどめて検出できることが分かった.またイオン引きだし電場を最適化することによって10x10^3amu m/s程度の高い運動量分解能を持つことが明らかとなった. (2)強光子場中(〜0.38PW/cm^2)におけるCS_2のクーロン爆発過程,CS_2^<3+>→S^++C^++S^+,に着目し,生成するすべてのイオンの運動量を同時に測定した.生成した2つのS^+イオンが持つ運動量ベクトルp_1(S^+),p_2(S^+)がなす角θ(S^+, S^+)はピークを〜135°に持つ分布(FWHM〜30°)を示した.これはCS_2X^1Σ_g^+状態の分子構造を保ったままクーロン爆発を起こした場合(ピーク〜165°)に比べて著しく狭く,強光子場中のCS_2^<z+>(z=0-2)において,変角振動方向に直線形から屈曲形へと大きな運動が誘起されたことが初めて見い出された.観測されたS^+およびC^+の運動量ベクトルの平均値<p_1(S^+)>, <p_2(S^+)>, <p_3(C^+)>から,クーロンポテンシャルを仮定した古典計算に基づいて,クーロン爆発直前のCS_2^<3+>の構造決定を行った.その結果,クーロン爆発直前のCS_2^<3+>が屈曲座標方向および結合伸長座標方向に大きく変形した構造を持つことが明らかとなった.
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