ポリイソプレンゴムを素材として温度・応力・歪を制御パラメータとしたガラス転移、結晶成長の研究を行った。 本研究では温度に加え、歪/応力を制御パラメータとして、大変形が可能でマクロな流動が生じない系としてのゴム状物質を主な実験対象として、ガラス転移についての実験的・理論的研究を行った。また凍結構造をもつ系のダイナミクスを記述する共通の数理構造についても考察した。線形粘弾性を自然に拡張した現象論モデル方程式を提案し、架橋ゴムのガラス転移についての実験結果と合わせ、ガラス状態は1つまたは少数の状態変数によって記述されるのではなく、ガラス化する前の「履歴」によって記述されることを示した。このモデルでは温度・歪が履歴をもつ場合、各時刻での温度・歪で決まる緩和時間で記述されるだけの緩和が、線形のレオロジーモデルに基づいて進行することを仮定し、記憶効果は緩和関数の関数形が温度・歪に依存しない(時間スケーリング性をもつ)こと、および緩和関数が単一指数関数ではないことに起因することを示した。 結晶化についての研究では、イソプレンゴムの一軸変形における温度・公称応力・伸長比・変形速度関係の測定から結晶化と融解についての情報を読み取る実験・解析方法を提案した。融解温度の伸長による上昇は変形による溶融状態でのエントロピー減少によるものではなく、主として融解における収縮に必要な仕事に起因することを示した。結晶化速度は、一定温度では張力増加とともに単調に増加するが、一定張力では結晶化温度に対して極大を示す。結晶化開始時の温度・伸長比・変形速度の関係を単純化した速度論モデルより解析し実験結果を再現し、融解および結晶化について提案した考え方が妥当であることを示した。
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