研究概要 |
マックスウェル粘弾性体を考え,その中で起きる断層運動によってもたらされる重力変化について定式化をおこない,計算コードの開発を終了した.前年度は垂直断層上の水平横ずれ断層を取り扱ったが,今年度は同じ断層上での縦ずれ断層を扱えるようにした.具体的には,前年度同様,点震源で近似できる1回の地震を考え,それが発生した後のポストサイスミックな緩和過程を,現実的な地球モデルについて計算した.計算の結果,(1)低粘性領域の深さにほぼ対応した水平スケールの震央距離で、重力の時間変化の顕著になっていることや,(2)震源近傍の粘性に応じて、時間変化パターンが異なることが明らかになった.震源深度と粘性構造とによって地表変形の大局的な振舞いが規定されていることを再確認した. データ解析については,中国における重力データの収集を開始した.同時に海面高度測定データから,海洋力学固有の擾乱を補正してジオイドを推定するために必要不可欠な乱流拡散係数を見積もった.具体的には,北太平洋や南太平洋、さらには、北大西洋において、航走中の研究観測船から多数のXCP(投棄式流速計)を海洋中に投入することで鉛直高波数の流速シアーの強さを求め、さらに、その情報をGregg(1989)の実験式に代入することにより、各深度での乱流拡散係数を広範囲にわたって見積もった。その結果、海洋深層における乱流拡散係数が「30°Nをはさんで急変する」という顕著な緯度依存性をもつことなど、今まで全く指摘されてこなかった重要な事実を明らかにすることができた。
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