研究概要 |
今までの地震計は最高性能のものでも板バネ等が使用されており,環境温度変化に依存したドリフトや複雑なバネによる重力の打ち消し機構,それによる設置の難しさがあった.そのような事から逃れるために永久磁石による錘の浮上を地動検出器に採用することが,この研究で開発しようとしている地震計の最大の特徴である.平成13年度は,NS交互着磁のフェライトシート磁石を使用し,磁石の細い着磁帯列に対して水平面の直交方向を板バネによるX型ヒンジで拘束し錘を安定に浮上させた.そして錘の磁気浮上を併用した振り子を製作して実験を行った.ヒンジとして最低限必要な機械強度を確保しながらバネ常数を低くして自然周期がどこまで長くできるかを見て,振り子の自然周期が12秒以上達成可能であることを確かめた.その後,振り子に付属した磁気バネ機構(永久棒磁石をソレノイドコイル内に挿入したバネ機構)でヒンジに対してバネを作り,振り子全体のバネ常数を増減できることも確認した.またフィードバックコイルを錘に付け,以前より使用している静電容量位置検出器(最大分解能は0.5nm)で錘の位置を測定してフィードバック回路を形成することで,サーボ型地震計を形作ることに成功した.フィードバック回路は,制御性能を向上するために位相補正用のフィルターを新たに設計・製作し,付加された.現状では最適制御とはいえないが,振り子は振動検出器として実験室内で動作した.また磁気浮上やフィードバックアクチエータ,磁気バネなどに永久磁石を使った地震計では,地磁気の変化も影響する可能性があり,地磁気を1/500程度に落とせる多層型のパーマロイ防磁ケースも開発し,現在製作中である.またより安定に振り子の自然周期を延ばすために,重い錘を浮上させる必要があり,強磁場を安定に発生できる希土類のネオジウムコバルトNS交互着磁磁石の開発にもほぼ目処がつき,現在製作中である.
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