研究概要 |
本研究は、能動型リモートセンシングと受動型リモートセンシングを組み合わせた地上からの複合観測により,氷晶雲の雲物理特性と放射特性との関係を解明して、氷晶雲の放射エネルギー収支に及ぼす効果を定量化することを目的とする。あわせて、雲レーダやライダー等の能動型センサによる氷晶雲の観測法を開発し、将来計画されている能動型センサを搭載した人工衛星による雲観測の有効性の検証に寄与する。 今年度は観測装置と観測データ解析手法の改良、および雲のリモートセンシング解析に及ぼす誤差評価に力点をおいた。浅野は、受動型リモートセンシングの重点測器となる分光放射計の検定観測を、2002年12月にハワイ島マウナロア観測所において実施し,器械定数を高い精度で決定した。そして,分光放射計による大気の光学的厚さの測定値をもとに,ライダーの検定定数を高精度化する手法を開発した.また,氷晶を含む雲における太陽放射の放射伝達特性を計算するスキームを用いて、氷晶雲や雲粒と氷粒子の両方を含む混合層雲の放射伝達シミュレーション計算を行い、これらの雲の放射特性は氷晶の微物理特性とその高度分布に強く依存することを明らかにした。 岡本は、雲レーダとライダーによる複合観測データから氷晶雲の微物理特性を導出するアルゴリズムを開発し、論文発表するとともに,既存の観測データに適用して性能を確認した。特に,ライダー観測における多重散乱による誤差の影響を数値シミュレーションによって詳細に調べ,測定誤差と多重散乱誤差の相対的影響を評価した.さらに,雲レーダとライダー,およびマイクロ波放射計等の受動型センサを組み合わせた複合観測から雲粒や雲水量等の高度分布を抽出するアルゴリズムの開発を行った.また,2波長でのライダー観測から雲底下でのエアロゾルの微物理特性を抽出する手法を開発し,実際の観測データに適用してその性能を確認した.
|