研究概要 |
本研究件氷床氷中の不純物の挙動と結晶粒界移動への影響を実験的に明らかにし、その結果を申請者が開発した結晶組織発達シミュレーションに組み込むことにより、氷床コアの結晶組織データから過去の氷床流動と気候変動の情報を抽出する手法を確立することを目的としている。そのために本年度は低濃度(数十から数百ppb)の各種水溶性不純物(Na, Ca, Mg, Cl, F, Cl, NO3, SO4等)および固体微粒子(SiO2)を含む人工多結晶氷を作成する研究を行い、その試料を用いて結晶粒成長速度の温度依存性および不純物濃度依存性を明らかにする実験を行った。さらに、各種不純物を含有した試料を用いて二軸圧縮クリープ実験を行い、変形中の組織変化とクリープ速度に対する不純物の影響を検討した。本年度の研究により次の成果が得られた。 1)各種不純物を低濃度(数十から数百ppb)均一に分布する微細結晶粒試料を作るこの技術がほぽ確立した。 2)結晶粒成長速度の各種不純物濃度依存性および温度依存性(-5℃〜-15℃)を明らかにした。 3)硫酸・塩酸、硝酸が高濃度(数ppm以上)および高温域(-5℃以上)では純氷に比べてクリープ速度は速くなる(氷が柔らかくなる)が、氷床氷に含まれる程度の不純物濃度では氷の硬さに影響を及ぼさない。 これらの成果は8月にフランスで開催される国際会議で発表される。なお、14年度は昨年度に引き続きさらに低温域での実験と、結晶組織発達への拡散クリープの寄与を調べる実験を行う予定である。
|