研究概要 |
本年度は,南西諸島喜界島とフィリピン・ヴィサヤス地方における年代測定用化石試料の採集,精密地形調査及び高精度^<230>Th/^<234>U年代測定を重点的に行い,以下の成果を得た。 1.昨年度導入したα線スペクトルメーターを加えた測定システムの再構築によって,従来精密測定が困難だった小型の非造礁性単体サンゴ化石の年代測定にも利用できることになった。それによって,陸棚堆積物(grainstone)によって構成される喜界島では更新世低位段丘の主部はMIS(海洋酸素同位体ステージ)-5後期からMIS-3中期までの海面低下期にオフラップしながら堆積した堆積物によって構成されていることを明らかにすることができた。 2.パングラオ島南方に位置する小島(パミラカン島)の北部海岸沿いで3段のサンゴ礁段丘の発達を認め、それら段丘はMIS-5e, MIS-5c及びMIS-5aに形成された離水サンゴ礁である可能性が高くなった。その為,MIS-5eにおける海面高度を+3〜+6mとし,その後の隆起運動が等速であったと仮定すれば,MIS-5cとMIS-5aにおける海面高度は,それぞれ-6〜-8mと-9〜-11mであると推定できる。 3.パングラオ島のみならず,ボホール島南西部でも更新世の最低位サンゴ礁段丘がMIS-5eとMIS-5c,2回の相対的な高海面期に堆積した礁成サンゴ石灰岩によって構成されていることが確実となった。 4.既に年代測定を終えた更新世後期以降の喜界島産極浅海生の造礁サンゴ(Acropora palifera)骨格のSr/Ca比および^<18>O/^<16>O比を古水温計として利用する可能性を検討したところ,上記のように形成年代が明らかになったサンゴ礁堆積物から,それぞれの期間における海洋表層部の水温変化を知るための基礎データとして有効であることが判明した。
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