研究概要 |
本年度は,フィリピン諸島・ボホール島南西部とルソン島北西海岸および南西諸島喜界島と石垣島の両島に分布する第四紀後期のサンゴ礁段丘を中心に,精密地形測量と年代測定用試料採集のための野外調査を実施した後,計63試料から^<230>Th/^<234>U年代値を得た。以下にその研究成果を要約する。 1.昨年度,ボホール島南西端の南約19kmに位置するパミラカン島北部に,3段に区分できる海洋同位体ステージ(MIS)5e,5cおよび5aのサンゴ礁段丘の発達を明らかにした。今年度は,同島中央部から南部にかけ,MIS 5e段丘が発達するのみで,3回のサブステージすべての段丘が分布しない事とともに,MIS 5e相当の段丘構成物がMIS 7当時の礁成堆積物を不整合に覆っている事を明らかにした。 2.ルソン島北西部La Union州BacnotanおよびParaoir海岸において,完新世における海面変動の解析に有用な古海面指示者(サンゴ礁段丘とマイクロアトール群)の分布を確認し,ウラン系列年代測定法を用いて,4回(それぞれ,ca.8,000-6,600年前・4,700-3,900年前・3,100-2,800年前・ca.1,500年前)の海面停滞期があったことを明らかにした。そして,この僅か8kmしか離れない上記の両地域間で,同時期の海面指示者に分布高度の違いが認められる事は,垂直変動開始時期とその後の変位量が異なることに因ると結論した。 3.南西諸島では,喜界島の更新世サンゴ礁中位段丘に加え,石垣島における後期更新世段丘分布を検討した。その結果,石垣島で初めてのMIS 5e段丘の存在を認め,その分布高度から,石垣島の過去12万年間における隆起速度とともに傾動運動を論ずることができるようになった。
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