研究概要 |
本研究では,南西諸島,台湾及びフィリピン諸島等のサンゴ礁段丘を対象に,ウラン系列年代測定法を独自の研究手段として,西太平洋活動縁辺域における過去数十万年間の相対的海面変化と地殻変動量に関する地域間比較を試み,以下の新知見を得た。 1.南西諸島喜界島に関しては,島内で最も広く分布する最低位段丘構成物の堆積が海洋酸素同位体ステージMIS-5b〜-3であることと,特に細粒砕屑性石灰岩中の非造礁単体サンゴ化石から得たMIS-5b〜-3相当の年代値は,段丘外縁部に約41kaのサンゴ礁が形成されるまで,相対的海面高度が連続的に低下したことを示唆する。また,島の南西部荒木海岸に発達する完新世サンゴ礁段丘は6段に区分でき,それらの内,少なくとも4段は,それぞれ7.4ka,6.6ka,4.0ka,そして3.0kaに離水した。 2.粟国島・多良間島・石垣島の3島から初の^<230>Th/^<234>U年代値を得,粟国島の低位段丘がMIS-7,多良間島の最低位段丘はMIS-5c,そして,石垣島の最低位段丘がMIS-5e当時の離水サンゴ礁であることを明らかにした。 3.台湾の西海岸沿いに分布する最高高度45m迄の海成段丘で採集した造礁サンゴ化石から0.93±0.04〜8.57±0.13kyの年代値を得た。この事実は,最近の約1万年間における隆起量が極めて大きく,台湾が世界第一級の変動地帯に位置することを改めて確認した。 4.フィリピン諸島中央部ボホール島南西端に隣接するパングラオ島ではMIS-5e当時のサンゴ礁段丘が高度13〜14mに分布するが,同島から約15km南方のパミラカン島では29mに達する。これらの事実から,同地方における過去125kyの間の地殻変動が,小地域間で異なるブロック運動であると考えた。このように,同諸島の地殻変動量が小規模なブロックごとで異なることは,ルソン島北西海岸に分布する完新世段丘の分布高度と形成年代との関係からも支持される。
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