研究概要 |
木崎湖底水深27m, 29m, 26mから得られた3本のピストンコアについて,この科研費で導入した光散乱回析式粒度分析装置で,おおよそ5cm間隔で粒度組成変化を測定した.さらに,同一のサンプルについて,鉱物質をフッ酸でとかし,残った堆積性有機物を蛍光顕微鏡下で観察分類した.なお,コアは,過去1600年間の変動を記録しているものと,これまでの研究から考えられている. この研究の結果,湖底表層の堆積物中にも50〜60%の不定形有機物が含まれており,深度とともに一方的に増加する傾向は見られなかった.このことは,不定形有機物が湖底表層において生産されたことを示している.また,木崎湖では過去1600年間で,やや温暖であったAD1200年までは不定形有機物が多く,この後寒冷化すると不定形有機物が減少しビトリナイトが増加する傾向にあることがわかった.このことは,温暖期に湖底環境がやや還元的になり,不定形有機物化が促進されたことを示すと考えられる.このように,極めて軽微な気候変動でも湖水の循環に大きな変動をもたらし,その結果湖底の酸化還元環境が変化する可能性があることが示された.したがって,堆積物中の不定形有機物と他の有機物の比は,堆積物表層の酸化還元指標として極めて有効である可能性を指摘することができた. さらに,陸棚堆積物を対象として銚子で掘削された更新統堆積物を用いて,堆積性有機物の組成比と粒度組成を検討した.その結果も,温暖期には陸棚表層が還元的になることが黄鉄鉱などを指標として求められ、同時に堆積性有機物中の不定形有機物が増加することも示された.したがって,気候変動による海底の酸化還元環境の変化を堆積性有機物組成の比によって,求めることが可能であることがこの研究でも示された. これらの,淡水,海洋域での研究結果と汽水域での研究結果を比較するために,新潟平野における最終氷期以降の堆積物の堆積有機物分析を既存のコアを使用しておこなっている.また,14年度に研究用コアの掘削をこの科研費で行うための,現地調査と打ち合わせをおこない,掘削地点などを決定した.
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