研究概要 |
三重県志摩半島の鳥羽市相差町においてジオスライサーを用い3本の連続柱状試料(約4〜7m)を採取し,岩相記載,古地磁気・帯磁率測定,AMS^<14>C年代測定,粒度や微化石などの構成物組成分析,堆積相解析を行った.その結果,厚さ1m以上の海成粘土層の上位に厚さ約6mの沿岸湿地堆積物(有機質シルト層)があり,この中に十数枚の砂層を見出した. 岩相・層相記載や古地磁気・帯磁率測定,層序的位置関係から,これらの砂層のうち,12枚の砂層は水平方向に良く連続することを明らかにし,上位より順にOS-1・・・OS-12と名前をつけた.これらは津波または波浪によって海から突発的に運搬・堆積されたイベント堆積物と考えられる.層相解析や微化石分析によると,OS-1,OS-5,OS-8層は,貝殻片や有孔虫を含み,基底に侵食面をもち,級化構造,上部に木片や植物片を含む.この特徴は従来報告されている津波堆積物の特徴と類似し,すくなくともこれらの砂層は津波堆積物である可能性が高い.AMS^<14>C年代測定によると,OS-1層上位,OS-5層直上,OS-8とOS-9の間,OS-12の下位の2層準,海成粘土層中(アカホヤ火山灰やや上位)の試料は,それぞれ798±28,3007±30,3326±31,5437±35,5796±35,5951±35yrBPの値を示した.以上,今年度の研究の結果,今回見出した12枚のイベント堆積物は,約5900年前〜800年前のものであることが明らかになった. この他,次年度以降の津波イベント堆積物の予備的調査として,志摩郡志摩町大浦,片田,布施田で4本のジオスライサー柱状試料(各約4m)を採取し,主として岩相記載を行い,数層のイベント堆積物を発見した.
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