研究概要 |
三重県志摩半島の鳥羽市相差町で掘削した連続柱状試料(約4〜7m)について,古地磁気・帯磁率測定,AMS^<14>C年代測定,微化石分析を行った.これらの測定と分析は継続中であるが,珪藻・有孔虫・貝形虫化石などの微化石研究にとくに進展があった. 珪藻分析結果によると,7千年前までは内湾,7千〜3千年前は淡水湿地,3千〜千年前は海水の影響を強く受けた湿地,千年前以降は淡水湿地と環境が変化したことが判明した.このうち3千年前と千年前の環境の急激な変化は,津波イベントが原因と考えられる. 相差の湿地堆積物に挟まれるOS-1…SO-12と呼ばれる12枚の砂層は,津波または波浪によって海から突発的に運搬されたイベント堆積物と考えられていたが,これらの有孔虫化石を検討したところ,すくなくとも5枚の砂層は比較的深い中部浅海帯の海底から運搬されたもので,津波堆積物である可能性が極めて高いことを明らかにした.また,4枚のイベント砂層に含まれる貝形虫化石は,外洋沿岸部に生息する種であった. これらの微化石研究は,イベント堆積物認定に新たな視点を与えるもので,とくに珪藻や有孔虫化石が津波堆積物の認定に重要であることを具体的に示した. 本年度は,この他に,相差以外の沿岸湿地(南勢町,大王町,南島町,志摩町)について,津波堆積物調査と柱状試料採取を行い,各試料の岩相を記載した.このうち,南島町では,数層のイベント堆積物と火山灰層を見出した.この火山灰は相差堆積物中の火山灰に対比できる可能性があり,津波堆積物が広域に対比できる可能性を示した.
|