研究課題
基盤研究(B)
平成13-16年度の本研究で以下の成果を得た。研究代表者はベーリング海古環境復元の目的で、ベーリング海・北太平洋亜寒帯における研究航海数回にて海洋表層懸濁物質を収集し、珪藻・パルマ藻等プランクトン群集の分類と地理的分布を明らかにした。亜寒帯の植物プランクトン生産力は温帯と亜熱帯の植物プランクトンの生産力より高いことが判明した。また、亜寒帯ではパルマ藻と微小羽状目珪藻(Fragilariopsis pseudonana)が卓越したが、アリューシャン列島と沿岸付近では円心目珪藻が卓越した。Station KNOTでは3回CTDサンプルを採取し(1,5,8月)、植物プランクトンの鉛直分布を観察した。1月と5月にはパルマ藻が卓越したが、8月にはパルマ藻は密度躍層に沈み、円石藻(Emiliania huxleyi)が表層上部10mに多産した。珪藻では3つの時期ともF.pseudonanaが一番多く産出した。研究分担者は、ベーリング海・北太平洋亜寒帯で得た7本のピストンコア試料を基に過去10〜30万年の環境変動を復元した。プロキシとして珪藻、レディオラリア、フォラミニフェラ、有機C、N、CaCO_3、生物源オパール等を駆使した。研究成果の代表例として、ベーリング海の表層水循環の概要が理解でき、海氷分布の動向が始めて分かった。ベーリング海南部バウアー海嶺海域では、氷期に北太平洋亜寒帯からの表層水流入が著しく、海氷の影響は少ないことが分かった、一方、氷期の海水準低下に伴い、より閉鎖的になったベーリング海東南部のウムナック海台海域では、海氷による生物生産力低下と珪藻海氷種の出現を見た。また、北太平洋亜寒帯における既知のレディオラリア種Lychocanoma nipponica sakaiiの絶滅層準が、ベーリング海でも同じく5万年前と判明し、今後の層序学を容易にする貴重なデータを得た。
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