研究概要 |
ペルム紀末の大量絶滅とその後の底生動物の回復現象に関し,以下の研究をおこなった. 1.三畳紀初期の関節類のウミユリ,Holocrinusの詳細な形態の観察 宮城県北部の下部三畳系スミシアン階の平磯層産のHolocrinusの材料に加え,アメリカネバダ州南部のスパシアン階のHolocrinusの珪化した保存の良い材料を検討した結果,Holocrinus属が現生のゴカクウミユリ類と極似した特徴(茎の自切の存在,腕の靭関節の少なさ)を有していることが明らかになった.また,ペルム紀のもっとも進化したグループである有関節類の祖先とされるウミユリ類との比較では,三畳紀初期のHolocrinusは茎や腕の関節の種類と配置において大きな差異が存在することが明らかになった.一方,現生のホソウミユリ類は2000mを超える深海に生息し,その記録が少ないが,腕の関節の配置から考えると.ホソウミユリ類の方がゴカクウミユリ類よりもペルム期の有関節類の祖先と近い形質を持っていることが示唆される. 2.三畳紀初期の生痕化石から見た底生動物の回復 平磯層は下部から上部へ全体的に陸棚下部への深海化を示す堆積物からなるが,これに含まれる生痕化石を検討した.その結果ストームの波浪限界以浅の環境ではかなり多様な動物群が回復していたこと,しかし波浪限界以深ではきわめて多様度の低いことが明らかになった. 3.古第三紀最初期の底生動物の回復 フランス南西部,スペイン北東部のK-Tセクションにおいて,生痕化石に基づく底生動物の回復に関するデータを収集した.
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