研究概要 |
今年度は古生代末の大量絶滅後の底生動物の回復現象を明らかにするため,以下の研究を行った. 1.下部三畳系の炭酸塩岩中に含まれるサメの歯等の古生物学的研究 従来見過ごされてきた,石灰岩中の微細なサメの歯化石等について,石灰岩を酢酸を用いた酸処理することによって残査から取り出し,その鑑定,多様度変遷に関するデータを収集しつつある.この研究を行っているフィールドとして、a)沿海州ウラジオストック近郊アブレクセクション,b)アメリカネバダ州北部の3地域,c)宮崎県高千穂町の上村石灰岩の各地域の現地調査,サンプリング及び酸処理を行っている.この結果,従来明らかでなかったP/T境界前後のサメの多様度に関する新たなデータが得られつつあり,今までに得られている愛媛県城川町の田穂石灰岩中のサメの歯化石の結果と合わせ,サメ類の三畳紀初期の多様度変遷に関するデータが得られつつある.この結果は,中生代から現在までの主流となるサメ類(neoselachians)の起源が三畳紀初期にまでさかのぼる可能性の大きいことを示唆している. 2.宮城県中部,北部の下部三畳系平磯層・大沢層の生痕化石の研究 生痕化石は、必ずしも硬組織を残さない底生動物の存在と多様度を記録している.下部三畳系の平磯層と大沢層の生痕化石を、水平方向,垂直方向の両面から観察し,その種類と多様度変化を記録しつつある.この結果を,最上部ペルム系の登米層群の生痕化石と比較し,底生生物の多様度変遷を明らかにしつつある. 3.ペルム紀-三畳紀の境界を生き延び,放散したウミユリ類の推定 現代型ウミユリの起源,その中の系統関係を,化石と分子系統の両面から検討しつつあり,現代型ウミユリの中でどのグループが真に原始的であるかを推定した.それから他のグループの進化が短期間に行われたことが明らかになった.
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