研究概要 |
大量絶滅後の底生動物がどのように回復し,新たな分類群が出現したのかを明らかにするために,ペルム紀末の大量絶滅後,そして白亜紀末の大量絶滅後の2つのケースに絞り,その結果以下のような事実が明らかになった. 1.ペルム紀末期の底生動物の大量絶滅以前の多様度変遷を明らかにするため,ペルム紀末(Changsingian)の沖合層である北上山地の底生動物の多様度を生痕化石から見積もった.その結果,ペルム紀後期にすでに底生動物の多様度が低くなっていたことが示唆された. 2.三畳紀前期の底生動物の多様度を明らかにするため,同じく北上山地の平磯層の底生動物化石の調査を行った.その結果,この動物群が低多様度の種構成からなること,そして他地域の三畳紀初期の動物群と似た構成から成ること,しかも他地域よりも時代的に先駆けて出現していることが明らかになった. 長い時間軸で動物間の捕食-被食関係,特に殻を割る強力な捕食者がいつどのように変化したのかを明らかにしたのかを明らかにするため,浅海性の地層で二枚貝・巻貝類の化石を豊富に含む地層を対象に角張った貝殻が出現するか否かを調べた.中生代の地層は三畳紀初期から白亜紀後期までの9層,新生代の地層は古第三紀から更新世の地層までの12層である.このうち,中生代の地層から二枚貝,巻貝類の角張った破片を含む例は1例(白亜紀後期)にすぎなかったのに対し,新生代の地層からはほとんどの地層から角張った貝殻片が豊富に見いだされた.また,撹拌実験から物理的な営力(波浪,運搬)は貝殻の摩滅を引き起こすけれど,角張った破片を作り出すことはなかった.このことから角張った破片は殻を破壊する捕食者によって作り出されていること,そしてその捕食活動が活発化したのは新生代に入ってからであることが明らかになった.この結果は捕食活動の活発化が大量絶滅後の環境で起きたことを示唆している.
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