研究概要 |
本年度は,前年度作成した自由ピストン型衝撃波管の改良を行なつた.これは作成した衝撃波管では当初予定していた観測機器(特に圧力ゲージ)がうまく作動しないことが判明したためである.今回の衝撃波管はマッハ数10を超える強い衝撃波を発生させることを目的に作られているため,チューブの内径が6mmと大変に細い.そのためこの狭い領域で衝撃圧を測ろうとすると一段目ピストンからの振動をひろってしまい,、正しく衝撃波を観測できなかった.そこで自由ピストン型衝撃波管を二段式軽ガス銃として用い,秒速3km/s以上の速度で弾丸を飛ばし,その弾丸により強い衝撃波を発生させる装置を作成した.これはステンレスの小型角形圧力チャンバーに圧力隔壁を取り付けたものである.この小型チヤンバーに5気圧までのアルゴンガスを封入し,チャンバー自体を真空槽に入れる.そして真空槽内に高速度の弾丸を二段銃により撃ち込み,高圧チャンバーの圧力隔壁を破る.この時,圧力隔壁は弾丸の速度まで加速され,強い衝撃波が高圧のアルゴンガス中に発生・伝播する.この伝播の様子は光学用の窓からシャドウグラフ光学系により観測される.この方法では衝撃圧力の直接測定はできないが,衝撃波そのもので観測用のトリガーをとる必要もない.飛んでくる弾丸によりトリガーをとり,観測装置を始動することが可能である.また,高密度ガス中に強い衝撃波を発生できるので,コンドリュール形成実験においては,より効率的な摩擦熱の発生を期待できる. 上記装置の作成と伴に,水滴の高速気流分裂実験も行なつた.これはシリケイトメルトの模擬物質として水滴を用い,摩擦加熱による融解後,どのようにメルトが分裂してコンドリュールになるかを調べる実験である.水滴を衝撃波管内に設置し,衝撃波速度を変えて実験を行った.マッハ1.01〜1.12までの衝撃波を空気中で発生させ,衝撃波通過後の液体の様子を高速度デジタルビデオカメラによって撮影し,変形・分裂のモードや分裂後のサイズ分布を調べた.カメラの撮影速度は4000コマ/秒,露出時間は20μs,1画面の画素数は640x256pixelsである.この時発生する気流の速度は,10〜60m/sであった.水滴の直径は0.3〜5mm, Weber数=4〜400で実験を行なった結果,液滴が分裂したあとの「破片」の積算個数分布(あるサイズ以上の液滴破片の個数)は指数関数で表されることがわかった.また,片対数でプロットした際の分布の傾きは,弱いながら分裂のモード(Weber数)に依存する可能性が示唆された.
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