研究概要 |
1000粒以上の非溶融微隕石より,層状珪酸塩に富む微隕石を5個見出した。そのうち4個は層状珪酸塩にサポナイトのみを含むもので,残り1つが層状珪酸塩に蛇紋石のみを含むものであった。これらを放射光X線回折と透過電子顕微鏡観察を組み合わせ,詳細に鉱物学的研究を行った。 サポナイトのみを層状珪酸塩として含む微隕石はKlock and Stadermann(1994)によって一例の報告がある。われわれの研究により,サポナイトに富む微隕石が層状珪酸塩を含む徴隕石としては最も数の多いものであることが分かった。この微隕石に最も鉱物学的に近い隕石は,2000年にカナダに落下した炭素質コンドライトであるTagish Lake隕石であることが,詳細な鉱物学的比較により明らかになった。われわれの研究により,大気圏突入時の加熱を受ける前に,magnesite-siderite系列の炭酸塩鉱物を含んでいたサポナイトに富む微隕石が存在することが明らかになった。それらはTagish Lake隕石のcarbonate-richlithologyと呼ばれる部位やサポナイトに富む惑星間塵と鉱物学的に非常に近縁である事が分かった。Hiroi et al.(2001)を考慮すると,サポナイトに富む微隕石はD型小惑星からもたらされた物質である可能性がある。 また,蛇紋石に富む微隕石と強い水質変成作用を被っているCMコンドライトである狭山隕石を鉱物学的に比較することによって,蛇紋石に富む微隕石は強い水質変成作用を被っているCMコンドライトのマトリックスに似た物質であることが分かった。大気圏突入時の加熱の効果を考慮すると,この一ような微隕石はCMコンドライトと共通の起源を持つ可能性があると,すなわち,こうした微鰻石はC型小惑星からもたらされた可能性があるということである。
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