研究概要 |
昨年度と本年度において,昭和基地近くのとっつき岬で採取された塵試料を使って,南極微隕石の徹底的な回収・分類・研究を行っている。氷を溶かして得られた水1.4トンから10-100μmの微隕石を2500粒以上発見・分類することができた。これにより,本科研費の研究期間全てでいままで発見した宇宙塵は総計4000個以上となり,その中から約50個の層状珪酸塩に富む微隕石を発見できた。これらはすべて放射光X線回折を行い,層状珪酸塩がサポナイトのみのものが最も多いことを確定できた。この鉱物学的特徴を持つ隕石は非常にまれであるが,多くの含水惑星間塵の鉱物学的特徴とは共通している。しかし,現在までにTEMで観察した層状珪酸塩に富む微隕石は含水惑星間塵のようにアモルファス珪酸塩(ガラス状物質)や輝石・オリビンをほとんど含まない。 今年度の重要な発見としては,体積のほとんどを炭素質物質が占める微隕石をとっつき岬試料から20個近く発見できたことである。これらの微隕石の放射光X線回折より,主要鉱物は輝石,オリビン,金属鉄と硫化鉄(あるいはその酸化・風化したもの)であることが分かった。多量の炭素質物質を含む微小地球外物質は,無水惑星間塵の特殊なものとして過去に一例報告がある。しかし,今回見出した微隕石(以下,超炭素質微隕石)のように多量に見出されたという例はない。この超炭素質微隕石と上記の無水惑星間塵との比較によって,彗星起源物質の可能性があると我々は判断した。2個をワシントン大学・セントルイス校に送り,nanoSIMSによるプレソーラー粒子の探査をお願いした。そのうち1個の超炭素質微隕石を分析したところ,プレソーラー珪酸塩を隕石よりもはるかに高い頻度で含むことが確認された。これらは矢田博士によって2005年のLunar and Planetary Science Conferenceで発表された。
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