研究概要 |
イラヤ火山(フィリピン),アバチャ火山(ロシア)のかんらん石捕獲岩として確認された,マントル・ウェッジの特徴的な構成物と思われる極めて細粒なかんらん岩(F-type)を検討した.このF-typeかんらん岩は通常の粗粒なかんらん岩(protogranular〜porphyroclastic組織)から中間的状態を経て漸移しており,マントル・ウエッジ特有な応力状態を解析できる.中間的かんらん岩は細粒のかんらん石亜粒子の集合体としての複合粒子よりなるが,亜粒子かんらん石はF-typeかんらん岩の細粒かんらん石と,複合粒子は粗粒なかんらん岩のかんらん石粒子と同等のサイズを有する.これらがマントル・ウェッジ特有であるとするとマントル・ウェッジ特有の設定としてプレート斜め沈み込みによるせん断が考えられる.斜め沈み込みの海溝と平行な成分により島弧地殻には海溝と平行な横ずれ断層系が形成されるのは良く知られている.これがリソスフェア・マントルまで延長されることは十分期待できる.これによるかんらん岩のせん断/再結晶はスラプからの流体により促進されたと思われる.この流体は斜方輝石の形成などの化学的変化の同時にもたらした. ニュージーランド北島のンガトトラ火山岩類中のかんらん岩捕獲岩に未報告なマントル・ウェッジ過程であると思われる斜方輝石-単斜輝石脈を見い出した.この斜方輝石はかんらん石を置換している.単斜輝石はコスモクロア(NaCrSiO_6)成分を十数%(モル)まで含み鏡下で淡緑色を呈する,このコスモクロアに富む単斜輝石はスピネルに伴って産するのでクロムの起源はスピネルであるが,Si, Na, Caなどは外部から供給されたものである.テクトニックな設定は必ずしも明確ではないが,スラプの溶融メルトによるウェッジ・マントルの汚染(交代作用)である可能性が高い.
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