研究概要 |
スラブ起源の流体による交代作用を受けていると思われるカムチャツカ弧アバチャ火山の玄武岩質安山岩中のかんらん岩捕獲岩を詳しく検討した.かんらん岩はハルツバーガイトが主であり,単斜輝石に極めて乏しく,スピネルのCr#は0.6を越える.かんらん石を置換する二次的な斜方輝石の生成が特徴的である.二次的斜方輝石は,(1)放射状集合体をなし,ガラスを伴わないもの,および(2)自形に近く,ガラスや角閃石を伴うもの,の二種類がある.前者はシリケート成分(シリカに富む)を含む水に富む流体起源,後者は流体から低圧で分離したシリケートメルト起源であると考えられる.かんらん岩中に存在するガラスはかんらん岩の部分溶融では形成され得ないアダカイト的な組成を有している. 唐津高島のGroup IIIと分類されるオルソパイロクシナイトの地球化学的解析を行った.La-ICP-MSによる単斜輝石の分析によると,REE含有量は高いものの,アリューシャン弧のアダク島のアダカイト中の単斜輝石に類似したREEパターンを有する.従って,アダカイト的なメルトからの晶出の可能性が高い. 前年に引き続いてニュージーランドのウガツツラのかんらん岩捕獲岩中のコスモクロア成分に富む単斜輝石の成因を検討した.La-ICP-MSで測定すると,全体にREEに富み,明瞭なHFS元素の負の異常を示す.カーボナタイト的なメルトによる交代作用の産物であると解釈されるが,島弧マグマ源的な化学特性を有するために,マントル・ウェッジ中での生成の可否を検討する必要がある. 背弧海盆下のマントル・ウェッジを知るために,渡島大島火山のハルツバーガイト捕獲岩を再検討した.単斜輝石中の組成は日本海の最も未分化な玄武岩との非平衡を示唆し,ダナイトなどの存在を示唆する.
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