研究概要 |
1 微量生元素の多元素同時分析法の改良を進めた。ブランク値と検出限界を海水濃度の20分の1以下に低減した。本法を西部北太平洋亜熱帯域で採取した海水試料に適用し、溶存態Fe,Co,Ni,Cu,Znの分布を求めた。表層水のFe,Znは、亜寒帯北太平洋では枯渇しているが、亜熱帯北太平洋では高濃度で存在することを見出した。 2 6-8月に亜寒帯北太平洋で初めて行われた鉄散布実験に参加した。350kgのFeを80km^2の海域に散布したところ、珪藻が著しく増殖した。クロロフィルの増加は20μm、二酸化炭素分圧の減少は140ppmに達した。太平洋赤道域や南極海と比べて、この海域の生態系が、Feに対してきわめて敏感に反応することが明らかになった。この航海において、微量金属濃度、植物プランクトンの群集構造、光合成に関する生理状態、植物プランクトンの成長速度、微小動物プランクトンの摂餌速度、およびバクテリア数の観測を行った。 3 生態系と物質循環の季節変動を調べるために、南極海及び北西北太平洋で実施された研究航海に参加し、2項と同様な観測を実施した。 4 EDTA類縁体を添加した培地中において、Fe濃度が低い培養条件では、培地中のキレート配位子の種類と濃度が対数増殖期の増殖速度に顕著に影響することを見出した。放射性トレーサー55Feを用いたFe取り込み実験より、キレート配位子の影響は植物プランクトンの鉄の取り込み量と相関があることを確認した。
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