研究概要 |
1 2001年6-8月に西部亜寒帯北太平洋で初めて行われた鉄散布実験の試料の分析を進めた.350kgの鉄を80Km^2の海域に散布したところ,植物プランクトンが著しく増殖した.鉄散布パッチ内では光合成系IIの光化学反応量子効率(F_V/F_m)が増加し,有効光吸収断面積(σ_<PSII>)は減少した.これらの事実は,鉄散布によって植物プランクトンの生理状態が改善され,光合成潜在能力が増加したことを示す.植物プランクトン色素の分析により,珪藻類と渦鞭毛藻類が顕著に増加したが,通常この海域で優先する緑藻類とプラシノ藻類は生長を抑制されたことがわかった.溶存微量金属Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Cdの分析の結果,FeとともにCo, Cu, Zn, Cdの濃度が有意に減少した.減少比が植物プランクトンの元素組成に近いことから,これらの元素は植物プランクトンに取り込まれたと推定された. 2 2002年6-8月に東部亜寒帯北太平洋で行われた鉄散布実験に参加した.1と同様の解析を行い,北太平洋の東西で鉄散布が物質循環と生態系に及ぼす影響を比較する,2002年10-11月と2003年2-3月には北西北太平洋で,2003年2-3月には南極海オーストラリアセクターで海水試料を採取した.これらの試料の分析は現在進行中である.これらの海域における微量金属の時空間変動が初めて明らかになると期待される. 3 植物プランクトン培養液中に現れるFe配位子を濃縮し,CAS法と配位子交換-ACSV法により,その濃度と錯生成定数を評価した.
|