研究概要 |
本研究では(1)火星隕石12種,(2)オーブライト隕石12種,(3)Jilin(コンドライト)隕石8種,(4)月表土(A-16,A-17)試料15種,の試料を取り扱い,中性子捕獲反応によってそれら試料中に生じるSm, Gd,希ガスの同位体変動および^<10>Be,^<41>Caなどの宇宙線生成核種存在度から各試料が置かれていた宇宙環境を推定することを試みた。個々の結果をまとめると以下の通りである。 (1)火星隕石12種のうち6種から顕著な中性子捕獲の影響が検出され,さらにその中の4種については複雑な宇宙線照射履歴を示すことがわかった。火星表面において受けた宇宙線照射の可能性も考えられる。(2)オーブライト隕石の宇宙線照射環境は二つに大別されることがわかった。宇宙線照射年代に比例することなく高い被中性子フルエンスを示すオーブライトについては,その隕石母天体上での初期のレゴリス過程における宇宙線照射を反映していることが示唆される。(3)直径約1.5メートル大のJilin隕石試料から異なる深さごとに採取された8種の試料のうち4種から中性子捕獲効果が認められたが,その中性子フルエンスは低く,深さ位置による反応の違いは確認できなかった。(4)A-16,A-17両方のコアとも,その中性子フルエンスの深さプロファイルは二つの極大ピークを示すことから,これらのサイトは異なる二つのスラブの不完全な混合によって成っていると結論づけられる。アポロミッション時の試料はこれまでにも研究報告例はあるが,本研究のような詳細な研究例はなかったため,レゴリス生成過程に関して不明瞭であったことが本研究によって明らかにされた。
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