研究概要 |
水の亜臨界から超臨界域にわたる温度圧力領域において、OH伸縮倍音遷移による近赤外吸収スペクトルを測定した。(1)温度673Kで圧力範囲20〜350barにおけるスペクトル形状の変化から、超臨界水の近赤外バンドの成り立ちを調べた。低圧力においては、通常の気体に特有の多数の鋭い回転線が観測されるが、圧力の上昇と共に次第に回転線が潰れて融合し、3つのピーク(P, Q, R)からなる包絡線にまとまってゆく様子が見られ、350barにおいても回転構造の影響がスペクトル形状に残っていることが分かった。これは、673K,350barにおいてもある程度の割合の分子が自由回転を行っていることを示すものであり、従来の単純な解析関数の重ね合わせでバンドを分解して水素結合分布を論じることの有効性に疑問を投げている。(2)次に、バンドの面積強度を求め、既報の密度データを用いて分子積分強度を見積り、温度・圧力依存性を調べた。低圧力の気相領域では、分子積分強度は圧力に対してほぼ直線的に緩やかに減少することが分かった。これは、OH伸縮基音バンドの分子積分強度が圧力増加と共に顕著に増加することと対照的である。これらの圧力変化はいずれも水分子どうしの水素結合会合によるものであるが、低圧気相においても水素結合会合が起っていることを示すものである。また、分子積分強度に対する水素結合の影響が基音と倍音とで逆方向となることも興味深い。(3)液体〜超臨界流体おける比較的高圧領域では、分子積分強度とバンドの1次モーメントとの間に良い相関のあることが分かった。(4)水とベンゼンとの2成分混合流体について、温度373〜673K,圧力50〜350barの範囲で水相の近赤外in situ測定を行った。温度上昇と共に、水へのベンゼンの溶解度が顕著に増加することが観測された。更に混合による体積変化も臨界域近傍で異常に大きくなることが分かった。これらの結果は、平成13年度に得た混合流体の炭化水素相の結果と符合するものである。
|