本研究で明らかにした高温高圧混合流体の性質は以下の通りである。 (1)炭化水素相中の水の濃度が、一定圧力下で温度上昇に伴って初め劇的に増加し、1相臨界曲線付近の温度で最大に達し、より高温では急速に減少する。また、臨界曲線から離れた低温度域では、水の濃度は圧力に殆ど依存しないが、573K以上の温度では、著しい圧力依存性を示す。 (2)ベンゼンおよびアルキルベンゼン中で、523K以下の温度では水分子は主に単量体と2量体として子在する。また温度上昇による濃度増加のため、高温ほど2量体の割合が多くなる。 (3)高温高圧においても水分子とベンゼン環との間に"π-水素結合"相互作用が存在する。 (4)ある範囲の高温高圧条件下で、水と炭化水素が混合によって異常体積膨脹を起こすことを見いだした。これは、in situ分光測定で初めて可能となった発見である。水-ベンゼン系について詳しく調べた結果、特に大きな異常体積膨脹が起こる温度圧力範囲は、(a)水の気液平衡曲線、(b)3相共存曲線の延長線、および、(c)1相臨界曲線に囲まれた領域であることが分かった。 (5)2相共存領域における相互溶解度の温度・圧力依存性から、(i)ベンゼン中への水の溶解度に比べて、水中へのベンゼンの溶解度は一桁程度小さい、(ii)ベンゼン中への水の溶解度は一定温度で圧力上昇とともに減少するのに対して、水中へのベンゼンの溶解度は逆に増加する、(iii)これらの相互溶解度の非対称性は、水とベンゼンの分子サイズの違いと等温圧縮率の違いによって理解できる、ことを明らかにした。 (6)高温高圧水に関しては、(i)高温の圧縮気体あるいは気体類似の状態においては、水は単量体と2量体の平衡状態にあり、2量化エンタルピーは(-15±3)kJ/molである、(ii)673Kでは400barにおいてもかなりの割合の水分子が比較的自由な回転運動を行っている、(iii)水素結合会合の割合は、温度に関わらず、ほぼ密度だけで決まる、ことを明らかにした。
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