研究課題/領域番号 |
13440170
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 正彦 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教授 (80241579)
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研究分担者 |
渡辺 昇 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (90312660)
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キーワード | 電子運動量分光 / 波動関数形 / 同時計測法 / 角度相関 / (e, 2e) |
研究概要 |
本研究は、電子運動量分光に画像観測イオン検出法を応用し、分子軌道毎の波動関数形を三次元測定する手法の開発を目的とする。 電子運動量分光によれば、原子分子の高速電子衝撃イオン化により生成する非弾性散乱電子と電離電子双方の運動量(エネルギーと散乱方向)を同時計測法を用いて計測し、電子オービタルの一つ一つを運動量空間で観測できる。しかし、通常の実験では対象とする気相分子のランダムな空間的配向により測定結果は空間平均したものに限定され、波動関数形が持つ多くの情報を失ってしまう。本研究計画は、axial recoilに基づいた解離イオン検出による分子配向特定の原理を本分光に応用することでこの難点を克服し、電子構造のより詳細な研究を試みるものである。 平成14年度中に以下の4つの研究を行った。 1.本補助金により、電子検出用二次元検出器を購入し、平成13年度に製作した電子銃、散乱ガスセル、反跳イオン検出用分析器、電子エネルギー分析器、及び(電子・電子・解離イオン)三重同時計測用エレクトロニクスと組み合わせ、装置として完成させた。 2.パルス電子銃を用いた水素分子の電子衝撃イオン化による解離イオンの検出を通じて、反跳イオン分析器とエレクトロニクスの最適条件を検討し、所期の性能を満足する結果を得た。 3.窒素分子など幾つかの二原子分子の価電子イオン化を対象とした実験を行った。その結果、S/N比は悪いものの、(非弾性散乱電子・解離イオン)二重同時計測信号の検出に成功した。 4.個々の検出器のカウントレートなど同時計測に関する実験条件を詳細に検討した結果、解離イオン検出器の取りこみ角を大幅に制限すれば上記S/N比を改善でき、(非弾性散乱電子・電離電子・解離イオン)三重同時計測を行える見通しを持つことができた。 以上の成果を踏まえ、本研究の目的である配向分子の電子運動量分布測定に向けて、装置の改良を進めている。
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