放射光および電子衝突による分子の超励起とその緩和

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13440175
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 河内 宣之 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (50161873)
• 研究分担者: 亀田 幸成 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (90214551) ; 小田切 丈 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (80282820)
• キーワード: 二電子励起分子 / 電子エネルギー損失分光法 / コインシデンス / 中性解離 / シンクロトロン放射光 / 電子衝突 / けい光

研究概要

1 放射光励起による多原子分子2電子励起状態の解明
放射光励起に伴い生成する中性解離断片からの可視・紫外けい光を、分光器と冷却CCDにより検出し、けい光放出断面積絶対値を放射光エネルギーの関数として得る実験を今年度も継続して行った。13年度に行ったメタンの実験において、2電子励起状態経由の励起水素原子生成振動子強度が1電子励起超励起状態経由のそれの2倍にも達するという興味深い事実を見出した。14年度は、この結果を踏まえ、多原子分子2電子励起状態の普遍性をつかむことを目的に、メタンと同じ10個の電子をもつアンモニアについて実験を行った。その結果、メタンと同じく、1電子超励起状態の他に2電子励起状態が励起水素原子生成に大きな役割を果たしていることを明らかにした。
2 時間分解コインシデンス電子エネルギー損失スペクトル法による酸素分子超励起状態の解明
電子衝突により分子を励起し、その後の中性解離により生成する解離断片の放出する真空紫外光子で標識しつつ、電子エネルギー損失スペクトルを測定する、コインシデンス電子エネルギー損失スペクトル法は、本研究代表者らが開発した方法であり、これまで2電子励起分子の研究に威力を発揮してきた。14年度はこの手法をさらに進化させ、散乱電子と解離断片からの真空紫外光子の時間相関情報を取り入れた、時間分解コインシデンス電子エネルギー損失スペクトル法を確立することに成功した。この手法を酸素分子超励起状態に適用し、3s励起酸素原子を生成する解離過程の断面積を、カスケード成分と非カスケード成分に定量的に分けることに成功した。損失エネルギー16eV以上では、カスケード成分の寄与がほとんどであることを初めて見出した。

研究成果

• [文献書誌] T.Odagiri et al.: "Single-hole one-electron superexcited states and doubly excited states of molecules as studied by coincident electron-energy-loss spectroscopy"Nukleonika. (印刷中). (2003)
• [文献書誌] M.Kato et al.: "Single-hole one-electron superexcited states and doubly excited states of methane in the vacuum ultraviolet range as studied by the dispersed fluorescence spectroscopy"J.Phys.B : At.Mol.Opt.Phys.. 35・21. 4383-4400 (2002)
• [文献書誌] H.Fukuzawa et al.: "Collisional deexcitation of the excited rare gas atoms in resonant states : The Watanabe-Katsuura theory revisited"J.Chem.Phys.. 118・1. 70-74 (2003)
• [文献書誌] 河内宣之, 小田切丈: "コインシデンス電子エネルギー損失分光方による2電子同時励起分子の研究"放射線化学. 73. 33-42 (2002)
• [文献書誌] T.Odagiri et al.: "Doubly excited ethylene molecules as studied by dispersed uv-visible fluorescence spectroscopy"Proceedings of International Workshop on Photoionization. FB14 (2002)
• [文献書誌] K.Kameta et al.: "Photoabsorption, Photoionization, Neutral-dissociation cross sections of simple hydrocarbons in the vacuum ultraviolet range"J.Electron Spectrosc.Relat.Phenom.. 123・2-3. 225-238 (2002)
• [文献書誌] N.Kouchi: "Doubly excited molecules as studied by coincident electron-energy-loss spectroscopy"Proceedings of 2nd International Symposium on Low Energy Electron-Molecule Interactions. 68-73 (2002)
• [文献書誌] K.Kameta et al.: "Landolt-Bornstein, New series, volume 17, Photon and Electron Interactions with Atoms, Molecules and Ions, subvolume C"Springer-Verlag(印刷中). (2003)