1.放射光励起による多原子分子2電子励起状態の解明 放射光励起に伴い生成する中性解離断片からの、可視・紫外けい光放出断面積絶対値を、入射光子エネルギーの関数として測定した。入射光子エネルギーの範囲は、10-40eVである。メタン、アンモニア、水およびエチレンにつき、実験を行った。メタン、アンモニア、水においては、最も深い価電子のイオン化エネルギー付近にある、2電子励起状態に由来する励起水素原子生成の振動子強度が、その近傍の1電子励起状態に由来する、それに匹敵するという、きわめて興味深い結果を得た。この結果は、1電子平均場近似が、破綻していることを強く示唆している。さらに、これらの2電子励起状態を詳細に研究し、その実体を解明した。またエチレンについても、2電子励起状態の大きな役割を明らかにした。 2.コインシデンス電子エネルギー損失分光法による超励起分子の解明 電子衝突により分子を励起し、解離断片が放出する真空紫外光子で標識しつつ、電子エネルギー損失スペクトルを測定する、コインシデンス電子エネルギー損失分光法は、本研究代表者らが開発した手法である。この手法により、窒素分子、酸素分子、メタンのコインシデンス電子エネルギー損失スペクトルを、価電子のエネルギー領域にて、様々な入射電子エネルギー、散乱角にて測定した。窒素分子においては、興味深いことに、光学的禁制2電子励起状態が、大きな寄与を示していることを明らかにした。酸素分子については、時間分解コインシデンス電子エネルギー損失スペクトルにより、その超励起状態を詳細に研究した。メタンについては、25eV以上の領域に2電子励起メタンに起因する強いピークを見出した。また、測定時間の短縮を目指して、位置敏感型電子検出器を装備した第2世代システムを開発した。
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