(1)自由エネルギー勾配法と溶液反応エルゴードグラフィ:興味ある凝縮系反応に対してモンテ・カルロ計算、分子動力学計算と統計摂動法とを組み合わせて自由エネルギー面上の力場を計算した。さらに自由エネルギー勾配法を適用することにより溶液中の安定状態や遷移状態を最適化して特定した。さらに振動解析を実行して溶媒効果による振動数シフトを見積もった。その際に必要となる大規模数値計算を、並列コンピューティングシステムの支援の下で実行した。中問的な研究成果発表を平成13年9月に開催された分子構造総合討論会で報告した。 (2)凝縮系の量子動力学と確率過程量子化:平成13年度に代表者が完成した確率偏微分方程式の数値アルゴリズムをコード化した。その際、有限温度下での古典量子結合系として凝集系反応を取り扱うため、時間変数を複素数化して連立運動方程式を解くプログラムの開発を推進した。 (3)有機溶液反応の極限的反応座標解析:有機溶液化学反応系、特にメンシュトキン反応に対して極限的反応座標に沿った自由エネルギープロファイルを求めて微視的な溶液反応運動学を明らかにした。特に本手法のみが可能とする溶媒分子群の非平衡性や溶質分子に対する配向性とケージ効果などに焦点を当て、動径分布関数を求めた。 (4)凝集系における化学反応量子動力学の数値計算:前年度までに開発を進めてきた・凝集系における量子動力学を取り扱うための統合コンピュータ・コードの完成を目指した。具体例である水溶液中グリシン分子の異性化反応の計算を通して、多量の乱数を利用した計算結果の統計性について確率解析を実行した。その際重要になったのは、計算データの統計解析と可視化による量子経路の時空パターンの理解及び遷移振幅の溶媒構造サンプル数に関する収束性の吟味であった。グラフィック・ワークステーションを用いて、これら数値データをグラフ化・可視化して解析した。 年度最後に、展開してきた要素理論の最終的な完成をはかり、ミクロ分子環境場の効果とその非定常非平衡性に関して、その化学的・物理学的側面の二面からまとめて、11.研究発表欄(裏面)に記載したような学術誌に発表した。また最終的な報告を国内の主要学会(分子総合討論会、日本化学会)において公表した。
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