研究概要 |
アレイ検出器系の整備は昨年までに行ったので、本年度はレーザー励起スペクトルを観測するために、中間赤外半導体レーザーの調整を行った。鉛塩系の従来の赤外線レーザーを12-77Kの低温下で発振させ、波長4.5-5μm,16μm領域が測定可能になった。テストとして、多重反射型セルを用いた高感度な吸収分光に適用した。大気中から採取したNNO(存在量約350ppbv)の同位体種^<15>NNO, N^<15>NOのスペクトル強度を波長4.6μmで同時に測定し、採取した場所における存在量比を決定する実験を行った。大気中のNNOは生物(バクテリア)起源と燃焼反応起源が考えられている。起源によって同位体存在量比に違いが認められ、質量分析器での測定が報告されているが、レーザー分光法では直接測定できるのが利点で、その有効性を示した。 従来の赤外半導体レーザーは励起用の光源としては、出力が十分ではなかったので、高出力化を実現するために浜松ホトニクス社で試作した量子カスケードレーザーを利用するために性能評価を行った。レーザーは液体窒素温度で、波長は5.5μm領域で5kHz,50nsecのパルス幅で発振し出力は100mW程度が得られた。発振周波数幅の測定には本研究の一部として開発した、時間分解フーリエ変換型分光システムを用いた。その結果、多数のモードが同時に発振していることがわかった。これはレーザーの利得が高いことを意味し、今後、レーザー素子の端面を回折格子(Distributed Feedback型)にするなどの改良が必要である。本来の目的の励起スペクトル観測に十分適用できることがわかり、現在、開発を続けている。
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