新しい分子応答系:エレクトロキロオプティクス

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13440184
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 鈴木 孝紀 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70202132)
• 研究分担者: 辻 孝 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20029482)
• キーワード: 応答性分子 / 分子素子 / エレクトロクロミズム / 酸化還元素 / 分子不斉 / 円二色性 / ヘリセン / テトラシアノキノジメタン

研究概要

平成13年度には、(1)ヘキサフェニルエタン型電子供与体、及び、(2)テトラシアノアントラキノジメタン型電子受容体についての研究を実施した。以下にその詳細を示す。
(1)ジブロモビナフチルを出発物としてジリチオ体へ導きチオキサントンやキサントンとの反応でラセミ体のジオールを得た。これに光学活性なアルコールを付加させて得たジアステレオマーを分離後酸で処理すると、軸不斉に基づくエナンチオメリックなビス(キサンテニリウム)型ジカチオンが得られた。次いで、それぞれの還元でヘキサフェニルエタン構造を持つ光学活性なジヒドロ[5]ヘリセン型分子へと導いた。無色のヘリセン誘導体とジカチオン色素は電解で相互変換できるものであり、この時UV-Visスペクトルの変化ばかりでなく、CDスペクトルでも非常に大きな変化を示した。この系は電位という入力が2つ以上の出力に変換できる多重出力型分子応答系となるものである。(2)同様なエレクトロキロオプティクス応答系となり得る電子受容体として、キラルなエステル或いはアミド置換基を有するテトラシアノアントラキノジメタン型化合物の系統的な合成を行った。この骨格は電子移動に際して分子構造の大きな変化を伴うため、一段階で二電子がほぼ同時に移動するという特徴を持つ。これらの電解還元をUV-Visスペクトルで追跡すると、等吸収点をもって、ジアニオン種に由来する長波長部の吸収が現れた。また予備的な検討からはCDスペクトルも変化することが示されている。

研究成果

• [文献書誌] T. Suzuki, H. Higuchi, M. Ohkita, T. Tsuji: "Dual-mode Electrochromism Switched by Proton Transfer : Dynamic Redox Properties of bis(diarylmerhylenium)-type dyes"Chem. Commun.. 1574-1575 (2001)
• [文献書誌] J. Nishida, T. Suzuki, M. Ohkita, T. Tsuji: "A Redox Switch Based on Dihydro[5]halicene : Draotic Chiroptical Response Induced by Reversible C-C Bord Making/Breaking upon Electron Transfer"Angew. Chem. Int. Ed.. Vol 40. 3251-3254 (2001)
• [文献書誌] T. Suzuki, S. Miyamori, Y. Tsubota, T. Fukushima, T. Miyashi, Y. Yamashita, K. Imaeda, T. Ishida, T. Negami: "Single-Component Organic Conductors Based on Novel Radicals that Exhibit Electrochemical Amphotericity"J. Org. Chem.. Vol 66. 216-224 (2001)
• [文献書誌] T. Suzuki, M. Yamada, M. Ohkita, T. Tsuji: "Generation and Amphoteric Redox Properties of Novel Newtral Radicals with TTF-TCNQ Hybrid Structure"Heterocyles. Vol 54. 387-394 (2001)
• [文献書誌] T. Suzuki, K. Ono, H. Kawai, T. Tsuji: "Low-temperature X-ray structural Analysis of Propanedinitrile Derivatives Substituted with a bis(4-dimethylaminophenyl)methyl Group"J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2. 1798-1801 (2001)
• [文献書誌] T. Suzuki, T. Tsuji, T. Ohkubo, A. Okada, Y. Obana, T. Fukushima, T. Miyashi, Y. Yamashita: "Preparation, Structure, and Amphoteric Redox Properties of p-Phenylenediamine-Type Dyes Fused with a Chalcogenadiazole Unit"J. Org. Chem.. Vol 66. 8954-8960 (2001)