研究概要 |
当研究室で開発した1,2-ビス(アルキルメチルホスフィノ)エタン(BisP^*)と1,1-ビス(アルキルメチルホスフィノ)メタン(MiniPHOS)のロジウム錯体を用いて,エナミドとα,β-不飽和ホスホン酸の不斉水素化を試みた結果,最高99%の極めて高いエナンチオ選択性で反応が進行することを見い出した。一方,光学活性ビス(t-ブチルメチルホスフィノ)-o-キシレンを二級光学活性ホスフィン-ボラン(t-ブチルメチルホスフィン-ボラン)より2工程で合成し,そのロジウム錯体の構造を単結晶X線解析により決定した。つぎのその錯体を触媒として用いて4種類の代表的なプロキラルアルケンの不斉水素化を行った。その結果,19〜76%のエナンチオ選択性が観測された。また,そのロジウム錯体を-70℃で水素と反応させた結果,定量的にジヒドリド錯体が生成することを見い出した。このジヒドリドはBisP^*-ロジウムのジヒロリドよりも安定で,溶媒和錯体との平衡は観測されなかった。次にそのジヒドリド錯体と基質との反応を-80℃〜-20℃で行い,多核種NMRによる反応中間体の検出とそれらの挙動を調べた。その結果,4種類のモノヒドリド錯体が観測され,それらの構造をNMRにより決定した。さらに各々の濃度と生成物のエナンチオ選択性と相関の関係を明らかにした。これらの実験事実は,水素化がジヒドロ機構で進行していると考えることによって合理的に説明できる。
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