昨年に引き続き架橋部の構造と分子内付加速度の関連を検討した。不斉源部の速度に対する影響を調べるため導入したキラル摂動項は、本年度はその温度依存性も含めて解析を行った。ロジウムカルベノイドの芳香族への分子内付加反応は、架橋部の試薬側のキラリティーはエンタルピー的な加速効果が両立体異性体生成プロセスにあり、高い立体選択性を生まない一方、基質側のキラリティーは片方のプロセスをエントロピー的に加速し、もう一方を減速することが分かった。その差は、メチル基1つで30euにも達し、エントロピー立体制御の主因として確定できた。同様の研究をカルベノイドとオレフィンの反応にも行い、現在、結果がまとまりつつある。フェノールラジカルの2量化反応は、昨年の研究で立体選択性が非常に高く出ることが分かっていたが、今年度はフェノール部に置換基を導入し、2量化の収率向上を試みた。現在の所、従来の最高収率(31%)を凌駕することができていない。光付加反応は主に芳香族とオレフィンのメタ付加に関して検討し、架橋部のコンフォメーションと反応量子収率との関係を求めた。架橋部の内、試薬部あるいは基質部に近い位置の不斉中心は2つのプロセスを加速あるいは減速して立体選択性を誘起するのに対し、中央の置換基はいずれも加速するため、反応収率の向上には寄与するが、立体選択性には影響を与えないことが分かった。この結果は現在論文として投稿中である。光[2+2]付加反応は新しい原料合成段階であり、昨年から進展はない。なお、別途購入したNMR(ECA-600)が不調で、水中の基質とシクロデキストリンの相互作用の検討は15年度に行うことに予定変更した。
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