キラル架橋反応の特長を生かして、不斉触媒反応を構築するための研究を行い、以下の成果を得た。 1)キラル触媒の形状と架橋への反応点を決めるため、PD架橋のメチル基の位置およびメチル以外の置換基を有する架橋で、光メタ付加反応、ロジウムカルベノイドの芳香族またはオレフィンへの付加、ケテンオレフィン付加を行い、置換基はPDの2つのメチル基のいずれかにあることが条件であり、その大きさはイソプロピル基よりも小さいことが条件であることが判った。 2)架橋部上のキラル中心の導入と活性化エントロピーの差の誘起の関係を明らかにするため、キラルパータベーション項を新たに定義し、ロジウムカルベノイドの芳香族への分子内付加反応の解析を行った。架橋部の試薬側のキラリティーはエンタルピー的な加速効果が両立体異性体生成プロセスにある一方、基質側のキラリティーは片方のプロセスをエントロピー的に加速し、もう方を減速することが分かった。その差は、メチル基1つで30euにも達し、エントロピー立体制御の主因として確定できた。 3)キラル触媒としてシクロデキストリンを用い、フェノキシラジカルの2量化の立体選択性を検討した。生成物はほぼ1:1のジアステレオマー混合物であり、その収率は最高47%であった。この反応にβシクロデキストリンを加えると、収率は若干低下するが、立体選択性は向上し、2位の置換基がベンゾイルオキシ基の時に47%過剰率を達成した。 4)キラル架橋反応の研究から、ジアゾ化合物の気相熱分解により生成したケテンのオレフィンへの付加における立体化学は400℃と高温にもかかわらず、99%以上の純度で生成物が得られた。ジアゾ化合物を用いるキラル架橋不斉合成から多くの光学活性物質を実際に合成し立体選択的水素化過程を経る昆虫フェロモン・スペラピロンの形式合成や新しいヒドロホウ素を適用したポリケチドの部分合成に成功した。
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