ウルシランッカーゼの構造・機能相関を明らかにするために、ウルシの組織を採取し、これから、mRNAを単離した。ついで、逆転写酵素を作用させ、cDNAライブラリーを作成した。一方、ラッカーゼのN末端部分およびトリプシン消化断片のアミノ酸配列を決定し、プライマーを作成した。cDNAをテンプレートとしてPCRを行い、ラッカーゼ遺伝子をコードするcDNA断片を増幅させた。さらに、RACE-PCRを行い、ラッカーゼの全塩基配列を決定した。この情報をもとにして、成熟タンパク質のアミノ酸配列を決定した。ついで、これまで報告されているマルチ銅オキシダーゼのアミノ酸配列との比較を行い、ラッカーゼの活性中心を構成しているアミノ酸を特定した。これらの結果はデータバンクに登録した。まもなく、in pressになる予定である。 一方、ラッカーゼからタイプ2銅を選択的に除去した後、嫌気下で、Cu(I)を作用させることによって、三核銅クラスター部分のみが還元状態にある混合原子値ラッカーゼを作成し、酸素との反応を行わせた。その結果、通常の酵素反応過程では検出不可能であった酸素の2電子還元体が時間オーダーで検出できるようになった。このような事実から、酸素への電子移動は距離的に極めて近いタイプ2銅よりも、距離的に離れた位置にあるタイプ1銅からの電子移動の方が早いことが明らかとなった。 さらに、ビリルビンオキシダーゼの酸素によるターンオーバー過程を検討し、ラッカーゼとビリルビンオキシダーゼは共通した反応過程をたどることが明らかとなった。
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