研究概要 |
肝機能の臨床検査薬として利用されている不完全糸状菌Myrothecium verrucaria由来のビリルビンオキシダーゼを酵母Pichia pastorisで大量発現させることに成功し,組換え体が天然型酵素よりも安定性が高く,ビリルビンの生体存在フォームを選択的に触媒する特異性が高いことを確認した。一方,組換え体の酸素還元部位である三核銅クラスターは天然型酵素と異なる休止形で発現しており,低分子系では観測されたことにない極めて異常なCu(II)由来のシグナルを与えるが,反応のターンオーバーが一回完結すると,組換え体の酸素還元部位は天然型酵素と同じ状態に至ることがわかった。すなわち,休止状態の三核銅部位は,酵素反応中には存在しないフォームで存在していることがわかった。また,ビリルビンオキシダーゼの三核銅部位にのみ銅イオンが入った変異体を作成することに成功し,この変異体の反応から,通常,天然型酵素の反応では観測することの出来ない,酸素還元中間体を検出することに成功し,キャラクタリゼーションを分光学的に行った。また,酸素の還元種にプロトンを供給すると考えられるアミノ酸を変異させたところ,三核銅部位に1個しか銅イオンが入っておらず,このアミノ酸は構造維持と酸素還元反応の両方に必須の極めて重要なアミノ酸であることがわかった。 一方,ウルシラッカーゼの異種発現系の構築を行い,大腸菌において封入体として発現させるところまでこぎ着けたが,活性のある組換え体は得られなかった。そこで,コドンの使用頻度を変更した人工遺伝子を作成し,酵母および大腸菌での発現を試みたがmRNAが転写されるにとどまった。
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