研究概要 |
1)還元型チトクロムc酸化酵素の構造を用いて、反応初期段階の中間体である(a_3-O_2,Cu_B)の構造、電子状態、スピン状態を量子化学計算から明確にした。まず、還元反応に対する水分子の関与の可能性を検討するために、反応活性部位における水分子の位置を最適化した。水分子の位置は、a)チロシン残基のフェノール部の酸素原子に水分子の水素原子が水素結合を形成する、b)ヘムa_3のファルネシルエチル基の酸素原子に水素結合を形成する、の2通りが得られ、X線構造解析から得られている酸素原子の位置を再現した。a)の位置の水分子はフェノールの酸素原子との水素結合だけではなく、Cu_Bに配位するヒスチジン290の水素原子と水素結合を形成することによって、ヘムa_3のファルネシルエチル基からヒスチジン290にわたって水素結合の橋掛け構造を形成することが確認された。この橋掛け構造がプロトン供給の役割をになっているのか現在検討をすすめている。還元反応の初期段階の中間体(a_3-O_2,Cu_B)は、鉄原子と分子状酸素にそれぞれスピンが極在化した1重項ビラジカル状態が最も安定であることがわかった。 2)Cu(I)イオン存在下、5'-XG_1G_2G_3-3'(X=T or C)の1電子酸化による損傷は、G_1が選択的に損傷を受けることが実験サイドから報告されている。本研究では、Cu(I)イオンがGのN7位に配位した構造を基に、5'-XG_1G_2G_3-3'とそのラジカルカチオン状態の安定性と電子状態を量子化学計算から検討した。その結果、Cu(I)イオンが5'-XG_1G_2G_3-3'のG_2に選択的に配位することが一電子酸化のG_1の選択性の要因になっていることを解明した。
|