研究概要 |
1)還元型シトクロムc酸化酵素の活性部位における、O_2分子の還元反応の機構および電子状態の変化を量子化学計算から解明を試みた。昨年度の報告では、ヒスチジン290からヘムa_3のファルネシルエチル基にわたって水素給合の橋掛け構造がある事、ヒスチジン290とチロシン244との間に水分子が存在する事を報告した。本年度この水分子の役割を明確にすべく理論的検討を行なった。水素給合の橋掛け構造がプロトンの供給源であると仮定し、この水分子をヒドロニウムイオンに変えて構造最適化を行った。その結果、ヒドロニウムイオンはFe-OOに近づき、プロトンをFe-OOに渡した後、元の位置にもどり、(Fe-OOH,Cu_B)が形成された。すなわちFe-OOHを形成するためにこの水分子がプロントを運搬する役割を担っている事がわかった。(Fe-OO,Cu_B)から(Fe-OOH,Cu_B)へと変化する際、Feは3価に保持されるが、Cuは1価から2価へと変化した。(Fe-OO,Cu_B)では鉄原子と分子状酸素にスピンが極在した1項ビラジカルであり、(Fe-OO,Cu_B)では鉄原子と銅原子にスピンが極在した1重項ビラジカルである。 2)グアニンの1電子酸化に加えて、1重項酸素分子によるグアニンおよび8-オキソグアニンの酸化機構の解明を理論化学計算をもとに行っている。興味ある反応中間体、および遷移状態が得られつつある。 3)Cu(I)イオン存在下、5'-XG_1G_2G_3-3'(X=T,C)の1電子酸化による損傷のG_1選択性は、Cu(I)イオンがG_2に選択に配位することが要因になっていることが解明された。
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