研究概要 |
昨年度は,α-ジスルフォン錯体[Rh_2Cp*_2(μ-CH_2)_2(O_2SSO_2)](1a*,Cp*=η^5-C_5Me_5)と[Rh_2Cp*_2(μ-CH_2)_2(O_2SOSO)](2a*)との間の結晶相可逆的異性化(1a*から2a*への異性化は結晶相光反応,その逆の異性化反応は,結晶相熱反応)の機構を実験及び理論の両面から明らかにした。 本年度は,1.Cp*配位子のMe基一つをEt基に置換したCp'=η^5-C_5Me_4Etを有する[Rh_2Cp'_2(μ-CH_2)_2(O_2SSO_2)](1a')及び[Rh_2Cp*_2(μ-CH_2)_2(O_2SOSO)](2a')を合成し,1a*や2a*との応答機能性等を比較検討した。その結果1a'の結晶相光応答速度(蛍光灯照射下)は1a*に比べて極めて遅いことが分かった。現在その応答速度と結晶空間の相関関係をさぐっているところである。また逆反応である熱反応の比較を行っている。 2.対応するIr錯体[Ir_2Cp*_2(μ-CH_2)_2(O_2SSO_2)](1b*)を合成し,結晶相光異性化速度を比較検討した。その結果,蛍光灯下,淡黄色結晶の1b*が,橙色結晶の[Ir_2Cp*_2(μ-CH_2)_2(O_2SOSO)](2b*)に1a*とほぼ同じ速度で異性化すること,そして色の変化は,Rh錯体の場合に較べて鮮やかであることを見いだした。 3.ジスルフィド錯体[M_2Cp*_2(μ-CH_2)_2(S_2)](M=Rh(3a),Ir(3b))の強い求核性を利用したクロロ炭化水素の新規脱クロロ化反応の開発を行った。モノ、ジ、トリクロロメチルベンゼンとの反応では,後者二つは,室温の温和な条件で,二つのC-Clと一つC-H結合あるいはを三つのC-Cl結合を同時に切断してC-C_6H_6基がジスルフィドのS-S結合に挿入したジチオカルボキシラト錯体が生成することを見いだした。モノクロロメチルベンゼンではS原子がベンジル化されたジスルフィド錯体が生成することが分かった。
|