新規希土類重合触媒の開発

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13440203
• 研究機関: 特殊法人理化学研究所
• 研究代表者: 侯 召民 理化学研究所, 有機金属化学研究室, 主任研究員 (10261158)
• 研究分担者: 西浦 正芳 理化学研究所, 有機金属化学研究室, 研究員 (30332258) ; 会田 昭二郎 理化学研究所, 高分子化学研究室, 協力研究員 (30322689)
• キーワード: 立体特異性重合 / リビング重合 / ブタジエン / 希土類メタロセン触媒 / カチオン性錯体 / ガドリニウム

研究概要

ブタジエン重合における中心金属イオンの影響を調べるために、一連の希土類メタロセンカチオン性錯体[(C_5Me_5)_2Ln][B(C_6F_5)_4](Ln=Pr,Nd,Sm,Gd)を合成し、X線結晶構造解析を用いて結晶構造を明らかにした上で、重合挙動を比較検討した。これらの錯体はいずれも2当量のトリイソブチルアルミニウムAl(^iBu)_3と組み合わせると、良好な重合活性を示すことがわかった。さらに中心金属のイオンサイズの減少にしたがって重合活性が高く(Gd>Sm>Nd>Pr)、また分子量分布が狭くなることも明らかとなった。とくに、ガドリニウム(Gd)の場合、-78℃においても高活性を示し、ミクロ構造がほぼ完璧(>99.9%)に1,4-シスに制御されたポリブタジエンを与えた。
一方、Me_2Si(C_5Me_4)(NPh)YCH_2SiMe_3と[Ph_3C][B(C_6F_5)_4]との反応により、初めてのハーフメタロセン希土類カチオン性錯体[Me_2Si(C_5Me_4)(NPh)Y(THF)_3][B(C_6F_5)_4]を合成し構造解析することに成功した。この錯体は配位力の強いTHF配位子をもつため、同様な条件下でブタジエンに対して全く重合活性を示さなかった。これらの結果から、高い活性を有する触媒を創製するにはTHFのような強い中性配位子を持たない錯体が有効であることが強く示唆された。今後、このような配位不飽和なハーフメタロセン希土類カチオン性錯体の創製を行う予定である。

研究成果

• [文献書誌] Z.Hou, Y.Wakatsuki: "Recent Developments in Organolanthanide Polymerization Catalysts"Coord.Chem.Rev.. 231・1. 1-22 (2002)
• [文献書誌] Z.Hou, Y.Wakatsuki: "Lanthanide(II) Complexes Bearing Mixed Linked and Unlinked Cyclopentadienyl-Monodentate-Anionic Ligands"J.Organomet.Chem.. 647・1. 61-70 (2002)
• [文献書誌] Z.Hou, Y.Zhang, M.Nishiura et al.: "(Pentamethylcyclopentadienyl) lanthanide(II) Alkyl and Silyl Complexes : Synthesis, Structures, and Catalysis in Polymerization of Ethylene and Styrene"Organometallics. 22・1. 129-135 (2003)
• [文献書誌] S.Kaita, Z.Hou, M.Nishiura et al.: "Novel Two-Component Catalyst [(C_5Me_5)_2Ln][B(C_6F_5)_4]/AlR_3 (Ln=Pr,Bd,Sm, or Gd) for Highly 1,4-Cis Specific Living Polymerization of 1,3-Butadiene"Macromol.Rapid Commun.. (in press). (2003)
• [文献書誌] M.Nishiura, Z.Hou et al.: "Novel Z-Selective Head-to-Head Dimerization of Terminal Alkynes Catalyzed by Lanthanide Half-Metallocene Complexes"J.Am.Chem.Soc.. 125・7(in press). (2003)
• [文献書誌] Z.Hou, Y.Wakatsuki: "Science of Synthesis, Vol. 2(分担執筆)"Georg Thieme Verlag. 1070 (2002)