本研究は電子運動量分光から運動量空間での波動関数を決定し、それをフーリエ変換することによって実空間(位置空間)の波動関数を得、外側の波動関数の形から分子認識に通じる分子の形を決めることを目的とするものである。 この電子運動量分光の欠点は事象の確率が低く、測定に時間がかかること、したがって信号/雑音比が小さく、定量的なデータを得ることが難しいことが欠点である。そこで検出効率をあげるために二次元検出器を利用した新測定装置を本研究所の機械工場で製作した。本申請の研究費はその製作のためのパーツ類の購入にあてられた。本装置の完成によって以前の第一号機で要したより2桁近くの測定時間の短縮が可能となり、その結果約一桁の精度の向上を実現することができた。 今年度後半までに水素、窒素、一酸化炭素のような基本的な分子について再測定を行い、分解能、安定性等装置の基本的特性についての検討を完了するとともに電子相関についての考察を行いつつある。また、グリオキザル、バイアセチル等の等価な官能基を二つ持つ分子の最外殻軌道の対称性と反応性、空間相互作用あるいは結合相互作用についての研究も行い、予備的な結果を発表した。 現在は、アジ化水素(HN3)、N2Oなど生物活性を持つ分子についての測定に着手したところである。
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