研究概要 |
キラルな骨格を有するアニオン性脂質は,長鎖アルキル基を有する二本鎖型グルタミン酸骨格を含み,かつ親水性の高いスルホン酸を有するものを合成した。この脂質と一次元錯体との複合体[Pt(en)_2][PtCl_2(en)_2][脂質分子]_4は,既報(N. Kimizuka et al. Angew. Chem. Int. Ed. Eng.,2000)により合成した。合成した複合体[pt(en)_2][PtCl_2(en)_2][脂質分子]_4は,ジクロロメタン中において600nm付近に電荷移動(CT, Pt^<II>→Pt^<IV>)吸収を与えた(紫色、15℃)。この溶液を加熱すると電荷移動由来の吸収が減少し約30℃で完全に消失した。また15℃に冷却すると電荷移動吸収は完全に復活した。このように,加熱冷却によって一次元錯体の形成と解離を制御できることが明らかとなった。これらの複合体は,脂質のテール部位,スペーサー部位,コネクター部位を設計することによって,有機溶媒中においてPt^<II>-Pt^<IV>間距離を制御することができ,電荷移動吸収を制御できることが確認された。この複合体のジクロロメタン溶液について透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察すると、幅約50nmのロッド状構造,らせん構造を与えた。一方、脂質分子のテール部位にオレイル基を有する複合体のジクロロメタン溶液についてTEM観察を行ったところ、ハニカム構造が観察された(N. Kimizuka et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2002,in press)。このように,脂質分子の設計により,白金混合原子価錯体のバンドギャップ制御と,形態制御が可能であることが明らかとなった。
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