異なる外部刺激応答性ユニットを有する新奇な機能性有機物質類の創出

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13440213
• 研究機関: 姫路工業大学
• 研究代表者: 中辻 慎一 姫路工業大学, 理学部, 教授 (90124833)
• 研究分担者: 圷 広樹 姫路工業大学, 理学部, 助手 (80316033)
• キーワード: 機能性有機物質 / 機能性スピン系 / 磁性 / 導電性 / 光機能性 / 液晶性 / TEMPOラジカル / ラジカルアニオン

研究概要

光、熱、圧力、電場などの外部刺激に対して、異なった応答性ユニットを有する新奇な機能性有機物質類として、本年度は従来の研究の延長線上にある新しい機能性スピン系の創出に重点を置いて研究を進め、これまでに以下のような知見が得られた。
1、導電性スピン系の開発:アニオンとなりうる置換基をTEMPOラジカルに導入した、新しいタイプの有機ラジカルアニオン類を合成し、これをカウンターアニオンとして用いたTTF錯体(塩)の合成を行った。それらには、孤立ラジカルスピンによる反強磁性的相互作用が見られ高い導電性は観測されなかったが、X線結晶構造解析より、いずれの錯体においてもTTFユニットが二量化を起こし、導電性カラムは形成されていないこと等が明らかとなった。
2、光機能性スピン系の開発:分子の構造変化を利用して磁性を相互変換させ得る光機能性スピン系を開発する自的で、スチリルピリリウムおよびアンモニウム誘導体の合成を行い、塩交換反応によってTCNQ塩やTCNQF_4塩を得た。また、段階的にスチリルピリリウム二量体のTCNQ塩やTCNQF-4塩を合成し、得られた各ラジカルアニオン塩の性質とりわけ磁気的性質に検討を加えた。その結果、間接的ながら磁性の変換が可能な系であることがわかった。現在、更にビオロゲンユニットを光機能部あるいは酸化還元部として有する新しいスピン系の合成についても検討中である。
3、液晶性スピン系の開発:熱に応答する液晶性スピン系を開発することを目的として、コア部にビフェニルを有する種々のニトロキシド誘導体の合成を行い、それらの磁性や液晶性等の性質について検討を加えた。それらの内シアノビフェニル誘導体の1種において昇温過程のキュリー・ワイス的挙動が、相転移を経由した後の降温過程ではSTモデルの磁気的挙動に変換され、熱によって磁性の変換が可能な系であることを見い出した。現在、更にビフェニルあるいはトロポノイド骨格をコア部に有する各種の誘導体の合成についても検討中である。

研究成果

• [文献書誌] T.Ojima et al.: "Magnetic Properties of Anthracene Derivatives and the Corresponding Photo-Dimers with Stable Radical Substituents"Polyhedron. 20. 1505-1508 (2001)
• [文献書誌] H.Akutsu et al.: "A New Organic Anion Consisting of the TEMPO Radical for Organic Charge-Transfer Salts"Chemistry Letters. 208-209 (2001)
• [文献書誌] M.Mizumoto et al.: "Preparation and Properties of Novel Mesogenic Spin Systems"Molecular Crystal & Liquid Crystals. 363. 149-156 (2001)
• [文献書誌] H.Ikemoto et al.: "Aminoxyl Radicals Bearing a Mesogenic Core"Tetrahedron Letters. 42. 6873-6875 (2001)
• [文献書誌] S.Nakatsuji: "Organic Multifunctional Spin Systems Based on Aminoxyl Radicals"Advanced Materials. 13. 1719-1724 (2001)
• [文献書誌] S.Nakatsuji et al.: "Anthracene Derivatives and the Corresponding Dimers with TEMPO Radicals"Journal of Organic Chemistry. 67. 916-921 (2002)
• [文献書誌] 安西弘行, 中辻慎一: "有機電子物性"培風館. 141 (2001)