セレン種の化学種別自動定量を目指して、ビスムチオールII担持樹脂カラムを組み入れたフローインジェクション分析システムを設計し、その性能を評価した。なお、検出には、硫化物によるメチレンブルーの還元反応に対するセレン(IV)の接触反応を利用した。 構築した操作法は以下のとおりである:フローインジェクション分析システムは、内径0.5mmのPTFEチューブとダイフロン製のコネクターを用いて構成した。キャリヤーである0.1M塩酸の流れに六方バルブを用いて試料溶液を注入し、Se(IV)をビスムチオールII担持樹脂カラム(50×2mm)に吸着させる。続いてバルブを切り換え、0.01Mペニシラミン/0.1M塩酸溶液を用いてカラムに吸着しているSe(IV)を溶離し、sulfide-sulfite溶液及びメチレンブルー(MB)溶液と混合し、分光検出器により波長665nmにおけるMBの吸光度の減少をモニターする。Se(IV)とSe(VI)の両者を含む試料では、上記のようにして先ずSe(IV)のみを測定する。次いで、試料中のSe(VI)は塩酸溶液として煮沸、Se(IV)へ還元した後、全セレンの測定を行い、差からSe(VI)を算出する。 Se(IV)について得られる検量線は2次式で近似できる。1回の測定時間は5分弱であり、0.5μg Se(IV)/mlを4回測定したときの相対標準偏差は2%以下である。また、ブランク測定の標準偏差(n=10)の3倍として求めた検出限界は8ng Se/mlである。なお、試料溶液を20ml連続してシステムに注入することによって5ng/Lの測定が可能である。 本測定法を地下水を用いた添加回収実験に適用したところ、回収率、再現性ともに良好な結果を得ることができた。よって、本法は様々な試料中のセレンのスペシエーションへの適用が期待できる。
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