研究概要 |
われわれは導電性ポリマーであるポリピロールが過酸化されると脱ドープにより鋳型が形成されることを研究してきた。ポリピロールはピロールモノマーより酸化的に合成されるためポリマー内に陽電荷が発生する。この陽電荷はドーパントと呼ばれる陰イオンにより中和されるが,このポリマーをさらに酸化すると(過酸化)この陽電荷が消滅し,ドーパントイオンの脱ドープが起こる。このとき,ドーパントの形が分子鋳型としてポリマー内に記憶される。今までの研究でこの方法はアミノ酸の光学異性体め選択的取り込みに極めて有効であることが分かっている。この研究計画ではこの新しい分子認識法が他の多くの分子に対しても有効であるかとどうか,この方法の応用範囲について研究を行う。 今年度の研究ではアミノ酸より大きなコレステロールの認識に対して検討を行った。コレステロールの検出は現在酵素法が一般的であるが,本法を用いればこれよりも簡単にしかもセンサーとして利用できる。水晶振動子表面にコレステロールを鋳型とする過酸化ポリピロール膜を修飾したセンサーの場合,コレステロールに選択的に応答することが分かり,検出速度も数分以内であった。また,他の分子,たとえぱアントラキノンスルホン酸や無機イオンの妨害もほとんど認められなかったため,この鋳型はコレステロールに選択的であることが確認できた。今後さらに多くの分子に対して本法を適用し,その有効性を検証する予定である。
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