研究概要 |
金属イオンは、一連の非プロトン性アミド溶媒中で水よりも強く溶媒和し、安定化しているにも関わらず、高い反応性を示す。非プロトン性溶媒中でアニオンの溶媒和は弱いが、これでは説明できない。非プロトン性溶媒の液体構造が水に比べて弱いことが原因であることを指摘した。これをさらに、確認するために非水混合溶媒を用い、溶媒のクラスター構造を変化させて反応とイオン溶媒および溶媒クラスター構造の関係を明らかにすることが本研究の目的である。イオン溶媒和に関しては、独自に開発した滴定ラマン分光洗を用い、非プロトン性アミド溶媒であるDMF, DMA, DMPA、TMU, DMP中で遷移金属イオンやアルカリ度類金属イオンの溶媒和クラスター構造に関し、溶媒和の立体効果の観点から研究をおこなった。DMPA、TMU溶媒中では5配位溶媒和構造をとること、さらにDMPAには、構造異性体平衡があり、金属イオンに配位すると強い溶媒和の立体効果が働き、立体効果の少ない異性体に平衡がシフトすることを見いだした。異性平衡の熱力学的パラメータをラマンスペクトルの温度依存性から見積もると、エンタルピー、エントロピーが金属イオンの大きさや溶媒分子の配位数に強く依存することを見いだした。ブロモ錯体の生成反応をDMPAとTMUで比較すると、モノ錯体生成だけに大きな違いがあることがわかり、DMPAの構造異性平衡が、この原因であることが示された。構造性の弱いDMFとプロトン性溶媒であるTFEおよびNMFの混合溶媒中でコバルト(II)クロロ錯体生成の溶媒組成依存性を調べた。塩化物イオンのTFEによる選択溶媒和にもかかわず、混合溶媒中の反応エンタルピーは純DMF中とほとんど変わらない。一方、反応エントロピーはTFE分率の増加とともに低下した。金属イオンに選択的に溶媒和していたDMFが脱溶媒和し、TFEとクラスターを形成することがエントロピー低下の原因であることがわかった。さらに、CoCl_3(sol)^-+Cl^-=CoCl^<2->_4+sol(sol=DMF, DMA, NMP, DMPA, TMU)およびFe(sol)^<3+>_6+SCT^-=Fe(SCN)(sol)+sol(sol=DMF, DMA)における反応活性種CoCl_4(sol)^<2->およびおよびFe(SCN)(sol)^<2+>_6の溶媒和の立体効果に関して研究を進展させた。
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